武兵衛さんのくらし上手

江戸時代後期の生活水準は確実に上がっている。生産面だけでなく、消費の側面、とりわけささやかな贅沢というものの重要性を、経済史もようやく注目するようになった。武兵衛さんの生活はけっして贅沢とか便利とかいえるものではないが、その生活はそうした小さな贅沢に満ちていて、暮らし上手に生きている。私もそれに共感する。
もちろん豊かであることが必ずしも幸福をもたらすものではない。社会が豊かになるだけ、人間の欲望は膨れあがり、それが満たされないことが不幸を意味するようになるからだ。長い人生経験を経て、武兵衛さんは欲望というものの際限なさ、恐ろしさを語る。節度ある本当の豊かさを武兵衛さんとともに探してみたい。

上図は心斎橋筋の本屋さん